お休みの日、

わたしたちはどちらかの部屋を訪れ、

共に過ごす。

Tくんの小さなシングルベッドでくっ付いて眠るのも、

わたしの部屋のセミダブルで、

彼が寝相悪く眠るのを見るのも、

悪くない。

夜更けまでふたりでだらだらとして、

朝はゆっくりと眠る。

平日に余裕があるわたしと、

まだ社会人ではないTくんは、

ほとんど毎日のように同じ時間を過ごす。

一時期、

おそらく荒れていたわたしを、

支えてくれたのは確かに彼だな、と思う。

やっと周りが見えて来た。

やっと少し、顔をあげることが出来た。

もうここでの日記は、必要がないのかもしれない。

++++

わたしはわたし自身に戻ろうと思います。

秘密にわたしの帰る場所を残しておきます。

もしよろしければ覗いてみてください。

Kの夢

2004年9月23日 恋愛
Kの夢を見た。

離婚したはずの彼の妻と、

彼がわたしのところに、

謝りにくる夢。

もう、必要無いのにな、という気持ち。

夢の中でわたしは、

もう終ったこと、と

そしてリアルであのひとに言った、

幸せだったから。

ありがとうね、と

いう言葉をまた、言っている。

最後の場面で本音なんて必要がない。

なぜなら未来を紡いで行く二人ではないから。

感情のままに言葉を吐き出せば、

苦い後悔が残るだけ。

淋しそうに微笑むKの顔を、

意識してわたしは見ないようにしていて、

ほんの少し二人になった時間で、

背中をくっつけて、

2年待って欲しい、と

Kの言葉が、宙に浮く。

大切にしてくれているTくんの積み上げて行く信頼と、

あまりに脆くて不安定なKの言葉を天秤にかけながら、

また、思う。

わたしはKがいい。

目が醒めると、

両方の指先が冷えていた。

飲み込んだ言葉が、

夢の最後の最後に、

わたしの口をついた。

もう永遠に、

発することがない言葉。

そしておそらく永遠に、

無意識に発するチャンスを伺っている言葉。

Kの長い睫や、

切れ長の目や、

華奢な躯や、

恐ろしく頭とカンがいいところや、

そしてその神経の脆弱なところや、

それゆえに他人と自分を傷つけ、

這い上がれないループに溺れる繊細なところを、

愛している。

が、それゆえに、

あのひとが、

他人と何かを作り上げていくのに不向きであることを、

知っている。

すくなくとも、

わたしではなしえないということを。

取り戻そうとは思っていない。

ただ、それでも、

いつまでも苦く思うんだろう。

たとえTくんに不実だとしても。

理性で感情を雁字搦めにしてしまうのは馬鹿らしいけれど、

理性の効かない感情なんて必要無い。

わたしにとって、

必要かそうでないかを考えると、

Kは後者だ。

おそらくKにとってもそう。

それを認めるのには時間がかかったけれど、

今は分る。

切実ではなく、いつでも、

Kに会いたいとは、

ぼんやりと思っている。
恋愛をすると、

感情が相手よりにシフトしがちになる。

そのたびに、

心のリモコンを誰かに預けてはならない、と

自戒する。

していた約束が、反故になるたびに、

掻きむしられるように痛む胸が、

依存の証拠だった。

Kに対し。

Kの行動ひとつで、

わたしの温度はころころと変わった。

Kが笑う。

幸せになる。

Kの気配が消える。

不安になる。

Kの言葉に不信を抱く。

わたし自身の存在すら、危うくなる。

わたしはKに支配されていた、と思う。

Kがわたしを懐柔していたのではなく、

わたし自身が彼に全体重を預けていたのだ。

恋愛に対してだけではなく、

対人関係すべてにおいて、

自分自身の感情の一片すらも全て自分の責任。

不愉快を感じるのも痛い思いをするのも、
辛い思いも歯痒い思いも、

それは自分が負うべきもの。

そう覚悟さえしていれば、

憎しみや怒りは存在しない。

自分に来る全ての影響は、

まず自分が立てた小さなさざ波から、

返って来ているのだから。

もしもわたしが死んでいて小さな風さえ起こさない存在ならば、

わたしの頬を撫でる風は、想い出でできた、
柔らかで小石一つ動かさない微力なものでしかない。

人は生き続け誰かや何かに影響を与え続ける。

そしてそこから跳ね返る音に、

一喜一憂をくり返す。

お互いに実りあるものがいい。
Tくんに対して、

特別要望がない。

不思議だなぁ、と思う。

今までは付き合っている相手に対して、

もっとわたしを大切にして欲しい、だとか

もっとスキだっていうのを表して欲しい、だとか

もっと誠実でいてほしい、だとか

思って来たし、

話し合いみたいなところで、

それを伝えて来た。

自分ばかりが与えているような感じがして、

フェアじゃない、とそればかりに胸を痛めた。

好きだから、

相手にも好きでいて欲しいし、

その気持ちを知っていたい。

そう思うことは、

ある意味当たり前ともいえることだと思って来た。

相手のことも、

分かってあげたいって思ってた。

でも今は、

心のなりたちが少し違う。

わたしにとって大切なのは、

気のきいた言葉一つなくても、

そこにいてお互いに同じ時間を過ごし、

そしてそれが心地よいということ。

二人で過ごす今。

先は見ないことにする。

先を夢見るあまり、

今この瞬間をおろそかにはしたくないから。

随分と年下のTくんは、

いろんな意味で経験値がまだ足りないと思う場所もある。

たとえばたまのデリカシー不足の発言も、

圧倒的に多いわたしのする腕枕の回数も、

もちろんベッドでの戯れも、

いろいろなことを「わからない」と言う所も。

でも、それでいいと思っている。

それがいまの彼なのだし、

もしも変わって行くのであれば、

良い方向に行くのも、悪い方向にいくのも、

わたしが促すまでもなく、

それはいつのまにか変化して行くことだから。

男の子は駆け足で追い抜いて行くことを、

わたしは知っている。

いつのまにかわたしを守れるほど、

強い翼を手に入れることを、

ただ眺めている。

手や口を出して相手を導こうとすることはある意味簡単だ。

でも、わたしの「良し」とする方向に誘導することは、

エゴに感じる。

行きたいところに行けばいい。

思う通りに、やりたいように。

わたしはわたしを生き、

彼は彼を生きているのだから。

そこになにかしらの接点が、

傍にいるときに安心して目を閉じていられるような信頼が、

密やかに息づいていればいいと思う。

優しすぎて少しぐらい優柔不断でも、

鼾をかいてもへたでも照れ屋すぎてもへそ曲がりでも、

ドキドキさせてくれなくても、

甘いことを言ってくれなくても、

べつにいいよ、

キミがきみでいて、

そしてそこにいてくれるのなら。
a-y-aさまリンクありがとうございました。
相互させていただきます。
のちほどゆっくり拝見させていただきます。

ベビーオイルさま、ゆうりさま、a-y-aさま。
秘密メッセージ書きました。

***

Tくんとは、毎日のように一緒にいる。

べつに会いたいなぁ、とか切望するわけでもなく、

ただ、隣にいるのが普通な感じ。

悪くない。

何日も何日も一緒にいて、

特別ラブラブってわけでもなく、

お互いがお互いの好きなことをしていたり、

わたしの一方的な話に、
Tくんが無愛想なあいづちをくり返していたり、

子猫のようにじゃれあって笑ったり、

あたりまえの日常はなんて平和で、

暖かいんだろう。

苦しくて息ができないような、
情熱的な想いしかしらなかったけれど、

まるでお姫さまのように<
大切に大切にされているようにコーティングされた
(あるいはほんとうに大切に)ことしかなかったけれど、

別段嬉しくて心震えるわけでもない日々のかかわりが、

わたしには、安らかだ。
Tくんが最終で合宿から帰って来る。

電話で声を聞いたら隣にいたくなって、

彼の渋谷への到着時間に合わせて、

眠りに行くことにした。

Tくんは明日就活があるから、

ほんとに眠るだけのために。

セックス

2004年9月10日 おもうこと
わたしは4年ほど前、

躯を使ったお仕事を半年ほどしていた。

だから今でも、躯に触れられるのは得意じゃない。

思いだすから。

その後もいくつも恋愛をしてきたし、

何人もの男の体重を受け止めて来たけれど、

頭の中から冷静さが消えて行くことはないし、

責められ喘ぎ声をあげるときすら、

反撃のチャンスを伺っている。

相手の愛撫に頭が白くなることなんてほとんどない。

断片的で極短い快感が、あるだけ。

それはそれで哀しいことなんだろうけど、

わたしが捨ててきたものの、一つなんだろう。

そう思う。

愛撫されるのは濡れるためだけでいい。

相手と一つになっているという感情と、

しっかりとわたしだけを映す二つの漆黒の瞳だけあればいい。

女をあまり知らないTくんの、

ぎこちなく触る指や唇を抱きしめながら、

愛おしく、思う。

あそこを舐められるのは嫌い。

その赤くグロテスクな塊を、

あまりにもたくさん男に見せて来たから。

もし、セックスに狂いたくなるときが来たら、

知らない男を探そうと決めている。

醜い塊を見られても、

恥ずかしいなんて思わないくらいの、他人を。

おそらくわたしは恋人に気づかれることなく、

そうしてしまうことができるだろう。

でも、しない。

わたしの性欲はとうの昔に死んでしまっているから。

抱擁を許すのは、

触れられるのを許すのは、

ひとりでいい。

ただ内側から破られるような、

苦しい快感だけが、

わたしがここにいるのだと教えてくれる。

いつのまにか怖くて、

相手に主導権を渡せなくなっている。

何代前の恋人からかは忘れたけれど、

いつのまにかセックスは、

まるで昔していた仕事のように、

わたしペースで進むものになっている。

もちろん、心情的にはすこし異なるけれど。

べつになくてもいい。

だけれど、深く結びついていることを実感できるから、

あってもいい。

ルール違反

2004年9月10日 恋愛
九月八日、夜勤明けで仕事から帰って来て、

少し休んでTくんのおうちへ。

九月九日。

ゼミの合宿に行くTくんと一緒に彼のお部屋を出て、

渋谷にてコンタクトを調達して、帰って来る。

今日から彼は2泊3日合宿。

土曜日に帰って来て就活らしいけど、

その日はわたしが夜勤。

なぜか時間が空く限りTくんと過ごしているせいで、

おるすばんが多い猫が淋しそう。

一緒に過ごしてはいるものの、

なんだか兄弟のような感覚で、

ラブラブな感じとは程遠いわたしたち。

甘い言葉なんて一つもないし、

好きだよ、なんて会話はしたことがない。


少し前ふざけて彼のケータイを見てしまったとき、

彼が「トモダチ」と会う、と言っていた日に、

鴬谷に行く打ち合わせをしているのを見てしまった。

ケータイを見てしまったことも、

それから女性の影らしきもののコトも、

言い出すことができなかったわたしは、

その夜彼がベッドでわたしに触れるのを拒否し、

言い出すべきか迷って、

ただ涙が止めどなく溢れて、

おろおろとする彼にそれでも理由を言い出せずにいた。

自分だって似たようなことをしていたこと、

それから勝手にケータイを見たこと、

それはわたしが知るべきではなかったことを思うと、

とても問いただす気分にはなれなかった。

ただ一生懸命わたしを慰めようとするTくんが、

その優しい手が、

同じように誰かになされているのだと思うと、

とても哀しかった。

それだけ。

Tくんが帰ったあと、結局わたしは、

 ケータイをみてしまいました、ごめんなさい

 鴬谷で約束するような女性がいるのなら、

 わたしは必要ありませんね。

 今までありがとう。幸せだったよ。

と、メールをした。

今ならばまだ、傷は浅いだろう、と

思ったのが一番の理由だと思う。

わたしはわたしが唯一でないと、

共にいることができない。

涙の理由は、彼のことが好きだから、なのか、

彼が嘘をついた、ということが哀しいからなのか、

よく分らなかった。

結局Tくんはわたしと会えなくなるのはイヤだ、と言い、

わたしに許しを乞い、

その女性とはわたしと知り合う前に知り合った女性で、

お互い割り切った付き合いで、

恋人が出来たら解消する約束の付き合いだったこと、

もう終わりにする予定だったこと、

中途半端にしたことを悪いと思っていること、を

白状した。

白状、という言い方が正しいかどうかは分らないけれど。

本当に終りにしようとしていたのか、

真実のところはTくんにしか、分らない。

しばらくメールを返さないでいると、

電話がかかってきたけれど、

出なかった。

なにを話したらいいか、よく分らなかったから。

信じて欲しい、と彼は言わなかった。

そう言っても意味がないことを彼は知っているのだろう。

深呼吸を何度かして、

わたしはわたしたちを検証した。

感情的に物事を見るのは嫌い。

わたしにも非はある。

そしてもしもケータイを見られたのがわたしならば、

わたしは相手を許さないだろう。

帰ってくるならばいいか。

昔のわたしならば、考えられない選択だろうな、と思いながら、

 わたしは自分が唯一でなければ耐えられない。

 そうでなくなったとき、

 きちんと終わりにすると約束ができるのなら、

 もう一度信じる。

そうメールした。

そのあと電話をして、無言がちになりながら、

何度もごめんなさい、と彼は言った。

本当の意味で信じている、とは言えない。

ただ、相手の行動を見ていればいいだけだと思っている。

許したのは彼のためじゃない。

ただ、居心地がいい場所を失いたくなかっただけだ。

彼がわたしといることを心地よく思っていることを知っている。

そしてわたしの猫が、大好きなことも知っている。


愛する、ということは、

意志だと思う。

このひととともにやって行こうと思うこと。

責める感情や、負の感情が起こることがあっても、

感情なんかに流されることはない。

そういう意味では、

恋ではないのかも知れないけれど、

わたしはTくんを愛してはいるのかもしれない。

ひとつひとつ、過ごして行く日常の中で、

穏やかに積み上げて行く信頼。

+

愛することが意志だと教えてくれたのは、

昔の男。

何かが起こっても、

別れるという思考は存在しない。

わたしがKに持っていた意志。

だから無理矢理剥がさなくてはならなかった感情。

+

その一方で、

Tくんを愛していくことは、

同時に孤独を育てていくこと、

一人を掴んで行くこと、

だと思っている。

いつか、わたしを巣立って行くだろうTくんを仮定し、

わたしはわたしを鍛えて行かなければ、

もしもその時がきたとき、

正気ではいられないだろう。

あの年代の男の子は、

一時的に年上の女に憧れる年代だと思う。

わたしは10も若い彼に、

全てを預けてしまえるほどはもう、

荷物が少なくはない年令。

彼を失っても、

帰る場所、みたいなものがない。

後ろは崖だ。

だから強く。

9月6日の日記

2004年9月6日
Kとは一週間連絡が途絶えている。

いっそのことこのまま、

連絡が来なければいいのに、と思う。

今日は日勤。

明日は夜勤。

少し多めに空く時間を使って、

Tくんの部屋に、泊まりに行く。
過去、わたしは全てを捨てて戦いたいと願うほど、

愛した男がいた。

今でも、愛している。

わたしを愛さなかった人。

でも、あの時生きて行くのに必死で、

崩れそうだったわたしを支えてくれていた存在。

なぜあいつなのかは、

あの時も分らなかったし、

今でもよく分らない。

でも、あの日

わたしがあいつの腕を去るとき、

とくに名残惜しいそぶりもなく幸せになれ、と

唇のはしを歪めて笑ったあいつに、

わたしは言った。

  一生愛してる。

  だからわたしは誰かを好きになって、

  その人に愛されて幸せになる。

  絶対どんな形でもわたしが幸せになることが、

  キミを愛しつづけていることの証明だと思う。

満足そうに笑ったあいつは言った。

  がんばれ。

  おまえはおまえをがんばれ。

忘れたことは一度もない。

わたしはあのとき、あいつがいなければ、

生きて行くことができなかっただろうから。

仕事が入るたびに悔し泣きをしたわたしの躯を、

注意深く、まるで壊れ物のように何度も抱いた。

バスルームに閉じこもって出て来ないわたしを、

赤ん坊のように柔らかに抱きしめ、

冷えた躯をそっとそっと、暖めた。

一線を引くように女として愛してはいない、と言い切った。

ただの一度も、

スキと言わない誠実さを、

わたしは愛した。

そう。

わたしはわたしの愛をあいつに証明し続けるためにも、

幸せであらねばならない。

わたしを唯一、おまえと呼ぶあいつ。

ゆー。

今のわたしには少し、分る。

あのときわたしの望んだ形ではなかったとしても、

ゆーはわたしを愛していたんだね。

だからわたしは、

ともすれば暗闇に飲み込まれそうになる思考を。

意識して意識して、

明るい方に向けて行きたいと思うよ。

ゆー。
今日から3連休。

明日はTくんのお部屋に伺って、
そのあと映画を観に行く。

一時間と少し、電話で他愛無い話。

明日会うと言うのに、

今日のベッドを、冷たいと思う。

Kとわたしが冷えて行くすぐその傍らで、

確実にわたしとTくんは何かを築き上げている。

それは少し、複雑で。

偽薬期間に入ったピルの、

いつもより少しだけ大きい粒を噛み砕く。

少しだけ躯がだるくて、体温が高い。

痛みを感じないぶん、生理中のイライラは少なくて、

ともすれば忘れてしまいそうなほど苦痛の少ない生理なのに、

それでもなんだか淋しくて泣きそうになる。

早く明日がくればいいのに。

睡眠薬は、少し前ODをやらかしてから止めてしまったから、

眠れない夜はどこまでも静かで長い。

静か過ぎる夜は、

右の耳から酷い耳鳴りがして、

ますます目が冴える。


それでも。

明日はいつもTくんが来てくれる電車を使って行こうと思う。

少なくとも前を向く材料がある夜は、

それを思って目を瞑ろう。
結果的に、Kは来なかった。

電車がとうになくなった1:55ごろ、

やっと仕事が終って帰れなくなった旨のメールが届く。

 もう待てません。

 約束が反故になるたびに、

 死にたくなるので待つのは終わりにします。

 少しでもわたしを思うのならば、

 返信はしないでください。

何度か送信を押して、すぐに、中止する。

結局メールは何度も送信と中止をくり返し、

送信ボックスの中に溜息とともに保存されたままだ。

丸二日。

Kの動きはない。

わたしも静観したままだ。

言いたいことはヤマほどある。

一度喧嘩をしてみたかった。

わたしもKも、本当に本当に思ったことを、

ぶつけあってみたかった。

飲み込むのではなく。

Kにもあるだろう。

わたしにはヤマほどある。

でも、そうしないのはわたしたちのシンクロする部分。

もう、このままKの元からは消えてしまおう。

はっきりと言える事実は、

わたしはKを愛している、ということ。

でもKを信頼することはできない、ということ。

共に同じ方向を見つめて歩いて行くことが、

柔らかで形の定まらない何かを、

一緒に作って行くことが、

あまりに不安定で怖くてできない、ということ。

おそらくKにとってもそうなのかもしれない。

怒りの感情はない。

わたしはKにさようならを告げることは、できないだろう。

だから口を閉ざす。

気持ちが、いつか、ついてきてくれればいいと思う。

恋愛ごとに一途な自分に戻ろう。

結局いくつかの想いの中心でいることは、

わたしには向いてはいないのだ。

さようならは、言えないけれど。

jail

2004年8月30日 恋愛
Kを待っている。

もともと仕事が終る時間が22時とか、
23時になることもある、という織り込み済みのせいか、

まだ分らないな、という感触。

常にどうせキャンセルだろう、という諦めはあるけれど。

連絡もなく、Kが来なかったら、

わたしから連絡をするのはもう止そう。

何度そう思っただろう?

そしてそう思ったときに限って、

Kからの連絡が来て、決心が鈍る。

その繰り返しだ。

もはやKに対して信頼も、

なにかを求める気持ちも、

なくなっている。

叶わないから。

ただ会いたいと思う。

愛していると思う。

Kにだけだ。

もういっそ、Kがこのまま消えればいいのに。

そうしたらわたしは、傷心を抱えたまま、

Tくんに癒されるんだろう。

たとえ狡いことだとしても。

待ち続ける時間は長過ぎる。

ここは暗くて、とても寒いから。

いっそのことKから連絡が来なければいい。

そうしたら一つの言い訳も聞かず、

諦めるのに。

祈るような気持ちで、

連絡を待っている。
昨日会ったのに、

時間が空くと淋しくなる気持ち。

わたしはそういう自分を、

知っている。

そしてあまりスキではないんだ。

だってなんだか、
自分というものをしっかりと持っていない気がするでしょう?

だってなんだか、
一人で時間を過ごせないなんて、
オトナとしてみっともないでしょう?

だってなんだか、
誰かを束縛しているみたいでしょう?

誰かを縛ってしまうのは苦手。

縛っているからそこにいてくれるのか、

自信がなくなるから。

じぶんの、こころに、

蓋をしつづけたわたしは、

上手にそれを表現するすべを知らない。

誰とも衝突しないわたしのなかにあるのは、

こころに響くアリのひとと、

ばっさりと切り捨てたナシのひとの二種類。

どんなに誰かを好きになっても求めても愛しても、

べったりと傍にいるだけじゃなくわたし自身が譲れないものが、

愛する対象と同格としてあればいいのに。

そしたらきっとこうやって溺れずに、

向こうに泳いでいけるのに。

ひとつだけ、

みつかる。

ねぇもしも火事になっちゃって、

キミと猫が少し離れた場所で助けを求めたら、

ごめんねわたしは先に猫を助ける。

なのに猫しかいない生活を淋しいと思う。

猫の次に好き、と言ったわたしに、

猫はあなたにとって特別だからそれでいいよ、と笑った、

あの人のにがわらい、を

おもいだす。
雨が降っている。

暖かな体温を感じて目覚めながら、

ああ、Kとはどれだけ肌を合わせていないだろう?と、考える。

もう3ヵ月以上になるだろう、きっと。

今日の当直が明けたら、明日Kがうちに来る予定。

予定は未定だ。

その約束が果たされるまで、

本当の意味で信じることなんてできない。

ただ小さな、1日の約束すら、

信じることができない関係と言うのも、

哀しいものだけれど。

かわいそうなK。

彼はわたしがどこまでも、

Kに誠実だと、思っているだろう。

Tくんの隣に眠りながら、

Kを、想う。

このコを傷つけたくない、と思いながら。

なぜ、Kがいいのかなんて、

昔はいくつも理由があったはずなのに、

今はその理由は全てK自身の嘘で否定されてしまった。

あとに残ったのは、

Kと共にいる時の、

赦しの形に似せた歪んだ愛情だけだ。

執着かもしれない。

わたしは、

石ころを長いこと宝石と間違えて抱きしめていすぎて、

それが石ころだと気づいた今も、

その抱きしめた時間の長さを惜しんで、

手放せないだけなのかもしれない。

愛情なんてどれもどこかが歪んでる。

苦し紛れにそう思ってみる。
ジョニー・デップはいい味を出していたと思う。

オーランド・ブルームはまだヒヨッコな感じ。

わたし的にはイマイチくん。
ベッドでだらだらとしながら観た。

やるせなさに涙が出て、

わたしの一瞬前に、

ビデオを観るために背中を向けたTくんが鼻を啜った。

ビョークはけして美人ではないけれど、

角度によってはとても美しく見えることがある。

信念を貫くことの美しさと強さを、

わたしも手に入れに行かなくちゃ。

一歩

2004年8月28日
Tくんの隣で眠りながら、

Kの夢を見た。

いつものように軽い調子で、

 もう楽になれよ、自分で選んでるんだろ?
 しっかりしろよ、
 そのまんま進めよ

と、言う夢。

おそらくわたしがKのことを去る決心を彼に告げたとき、

あのひとはそう反応するだろう。

反対にメールでは

 瑠璃草は僕の全てでした

 僕の気持ちはずっと変わらないから

なんて、ことを言う。

何度も、何度も、くり返し言う。

まるでわたしに戻って来てでも欲しいかのように。

実際Kにとって、

わたしはいないよりもいたほうがいい存在なのだろう。

心情的にどうであれKを全面的に赦す存在としてのわたしは。

できる限り傍にいてくれるTくんの隣で、

わたしはKから離れていくべきだ、と考えている。

このコを無駄に傷つけないために。

だけれどKに会ったその時に、

わたしはKに触れたいときっと思うんだろう。

そのくり返しだ。

全ての疑いや不信を飲み込んだまま、

それでも薄く、固いKのカラダを求める。

くり返す中で、

わたしはK以外を愛することはできない、と

確認する。

それでも、

わたしだけを見ない不誠実なKだけを見ていられるのなら。

全ての黒いものに蓋をしてKを選び続けていけるのなら。

またなにかは、変わっていたのかもしれない。

誰もいない暗い夜、

一言も言葉を発せずにただそこにあるだけの、

孤独な自分自身を抱きしめ続けていられるような、

それでも唯一のものに愛情を注ぎ満ち足りることができるなら。

哀しいけど、わたしにはできないんだ。

Tくんはなにも知らずに眠っている。

相変わらず、口数の少ない彼が、

たまに語るのを眺めるのが、

とても好きだと思う。

あのコとわたし

2004年8月27日 恋愛
よく、分らない関係になったわたしたちは、

週に3日は共に過ごす。

一緒にいればいるほど、

流れる空気は安らぎとなり、

阿吽の呼吸のようなものが生まれる。

わたしは好き、とは言わない。

あのコもスキとは言わない。

口数の少ないあのコが、

その行動で積み上げて行くさまは、

心地がいい。

傍にいて、

相手が一度もケータイを触らないというのは、

なんてぴりぴりしなくていいんだろう、と知った。

わたしの元には、

いくつかのボーイフレンドからのお誘いメールが入る。

そのたびに男?と聞くあのコに曖昧に微笑む。

ヤキモチを焼くのが可愛い。

 K

2004年8月25日 恋愛
迷いながら、

Kのメールに返事を返した。

いつものように、とくに責めるわけでもなく、

少し、自分の中で整理をしていたの、と。

会いたいね、と言ってみる。

会いたいのは本心。

Kからはどれだけ仕事が忙しいのか、

どれだけわたしを思っているのか、の

文面が返ってくる。

やはりわたしはもしも奈落があるのなら、

そこまで覗きに行かないと、

納得はできない。

遅れた誕生日のオイワイをして、と甘えるKに、

冗談めかしてわたしのはしてもらったっけ?と返すと、

 あ!ごめん、僕のもいいや。

 来年はちゃんとオイワイしようね

と、返って来る。

そうやって、去年の今頃、

同じ顔をして、同じ声のトーンで、

わたしを優しく抱きながら、Kは言ったのだ。

 ずっと一緒にいようね、と。

わたしとどこに行くつもりだったのだろう?

すでに妻と子と他に二人の女性がいたKは。

今はもう、結婚していない、ということは、

何度か部屋を訪れたことで、分かった。

ただ、部屋の隅に置かれた化粧水やシャンプーの選び方が、

わたしではない、

おんなのひとの匂いを放っていた。

彼の部屋を最後に訪れたのは、

もう三ヵ月近く前の話だ。

もうわたしは、

Kに女性がいたとしても、

責める立場にはない。

わたしも向こう側に渡ってしまったから。

ただ、真実を知りたい。

推し量るのではなく、

すべて虚構だったのだと、

想い出は美しいまま取っておくのがいいなんて、

思わない。

おそらくわたしは、

自分自身にしっかりとそれを突き付けなければ、

一歩も進めないんだろう。

そう思う。

これ以上Kに関わり続けていくことが、

不毛であるなんて器用に片付けることができたのなら、

たぶんKの真実が明らかになってもなお、

しがみついたりはし続けない。

明日なら行けるかもしれない、というKのメールに、

友達と約束がある、と答えた。

Tくんと映画を観に行く約束をしているのだ。

おそらくその後も一緒にいるだろう。

今までならば、

Kの予定を全て優先していた。

でも今は、不確実なKよりも、

約束を守るTくんとの約束を、

わたしも守りたいと思っている。

スキかどうかは、よく分らない。

それでも、

こころのありかたがほんの少し、

変化しているのを感じる。

もう少し。

Kを剥がすためには、

Kに近付いてその材料を見つけなくてはならない。

それもなにもかも全て、

会いたいだけの言い訳かも、
なんて100ぺんも自問自答してみたけれど、

そうかもしれないし、

そうでないかもしれない、なんて曖昧な答えしかでない。

それでも。

わたしは真実が知りたい。

もう、終っているのだと。

1 2

 

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索