わたしは4年ほど前、
躯を使ったお仕事を半年ほどしていた。
だから今でも、躯に触れられるのは得意じゃない。
思いだすから。
その後もいくつも恋愛をしてきたし、
何人もの男の体重を受け止めて来たけれど、
頭の中から冷静さが消えて行くことはないし、
責められ喘ぎ声をあげるときすら、
反撃のチャンスを伺っている。
相手の愛撫に頭が白くなることなんてほとんどない。
断片的で極短い快感が、あるだけ。
それはそれで哀しいことなんだろうけど、
わたしが捨ててきたものの、一つなんだろう。
そう思う。
愛撫されるのは濡れるためだけでいい。
相手と一つになっているという感情と、
しっかりとわたしだけを映す二つの漆黒の瞳だけあればいい。
女をあまり知らないTくんの、
ぎこちなく触る指や唇を抱きしめながら、
愛おしく、思う。
あそこを舐められるのは嫌い。
その赤くグロテスクな塊を、
あまりにもたくさん男に見せて来たから。
もし、セックスに狂いたくなるときが来たら、
知らない男を探そうと決めている。
醜い塊を見られても、
恥ずかしいなんて思わないくらいの、他人を。
おそらくわたしは恋人に気づかれることなく、
そうしてしまうことができるだろう。
でも、しない。
わたしの性欲はとうの昔に死んでしまっているから。
抱擁を許すのは、
触れられるのを許すのは、
ひとりでいい。
ただ内側から破られるような、
苦しい快感だけが、
わたしがここにいるのだと教えてくれる。
いつのまにか怖くて、
相手に主導権を渡せなくなっている。
何代前の恋人からかは忘れたけれど、
いつのまにかセックスは、
まるで昔していた仕事のように、
わたしペースで進むものになっている。
もちろん、心情的にはすこし異なるけれど。
べつになくてもいい。
だけれど、深く結びついていることを実感できるから、
あってもいい。
躯を使ったお仕事を半年ほどしていた。
だから今でも、躯に触れられるのは得意じゃない。
思いだすから。
その後もいくつも恋愛をしてきたし、
何人もの男の体重を受け止めて来たけれど、
頭の中から冷静さが消えて行くことはないし、
責められ喘ぎ声をあげるときすら、
反撃のチャンスを伺っている。
相手の愛撫に頭が白くなることなんてほとんどない。
断片的で極短い快感が、あるだけ。
それはそれで哀しいことなんだろうけど、
わたしが捨ててきたものの、一つなんだろう。
そう思う。
愛撫されるのは濡れるためだけでいい。
相手と一つになっているという感情と、
しっかりとわたしだけを映す二つの漆黒の瞳だけあればいい。
女をあまり知らないTくんの、
ぎこちなく触る指や唇を抱きしめながら、
愛おしく、思う。
あそこを舐められるのは嫌い。
その赤くグロテスクな塊を、
あまりにもたくさん男に見せて来たから。
もし、セックスに狂いたくなるときが来たら、
知らない男を探そうと決めている。
醜い塊を見られても、
恥ずかしいなんて思わないくらいの、他人を。
おそらくわたしは恋人に気づかれることなく、
そうしてしまうことができるだろう。
でも、しない。
わたしの性欲はとうの昔に死んでしまっているから。
抱擁を許すのは、
触れられるのを許すのは、
ひとりでいい。
ただ内側から破られるような、
苦しい快感だけが、
わたしがここにいるのだと教えてくれる。
いつのまにか怖くて、
相手に主導権を渡せなくなっている。
何代前の恋人からかは忘れたけれど、
いつのまにかセックスは、
まるで昔していた仕事のように、
わたしペースで進むものになっている。
もちろん、心情的にはすこし異なるけれど。
べつになくてもいい。
だけれど、深く結びついていることを実感できるから、
あってもいい。
昨日会ったのに、
時間が空くと淋しくなる気持ち。
わたしはそういう自分を、
知っている。
そしてあまりスキではないんだ。
だってなんだか、
自分というものをしっかりと持っていない気がするでしょう?
だってなんだか、
一人で時間を過ごせないなんて、
オトナとしてみっともないでしょう?
だってなんだか、
誰かを束縛しているみたいでしょう?
誰かを縛ってしまうのは苦手。
縛っているからそこにいてくれるのか、
自信がなくなるから。
じぶんの、こころに、
蓋をしつづけたわたしは、
上手にそれを表現するすべを知らない。
誰とも衝突しないわたしのなかにあるのは、
こころに響くアリのひとと、
ばっさりと切り捨てたナシのひとの二種類。
どんなに誰かを好きになっても求めても愛しても、
べったりと傍にいるだけじゃなくわたし自身が譲れないものが、
愛する対象と同格としてあればいいのに。
そしたらきっとこうやって溺れずに、
向こうに泳いでいけるのに。
ひとつだけ、
みつかる。
ねぇもしも火事になっちゃって、
キミと猫が少し離れた場所で助けを求めたら、
ごめんねわたしは先に猫を助ける。
なのに猫しかいない生活を淋しいと思う。
猫の次に好き、と言ったわたしに、
猫はあなたにとって特別だからそれでいいよ、と笑った、
あの人のにがわらい、を
おもいだす。
時間が空くと淋しくなる気持ち。
わたしはそういう自分を、
知っている。
そしてあまりスキではないんだ。
だってなんだか、
自分というものをしっかりと持っていない気がするでしょう?
だってなんだか、
一人で時間を過ごせないなんて、
オトナとしてみっともないでしょう?
だってなんだか、
誰かを束縛しているみたいでしょう?
誰かを縛ってしまうのは苦手。
縛っているからそこにいてくれるのか、
自信がなくなるから。
じぶんの、こころに、
蓋をしつづけたわたしは、
上手にそれを表現するすべを知らない。
誰とも衝突しないわたしのなかにあるのは、
こころに響くアリのひとと、
ばっさりと切り捨てたナシのひとの二種類。
どんなに誰かを好きになっても求めても愛しても、
べったりと傍にいるだけじゃなくわたし自身が譲れないものが、
愛する対象と同格としてあればいいのに。
そしたらきっとこうやって溺れずに、
向こうに泳いでいけるのに。
ひとつだけ、
みつかる。
ねぇもしも火事になっちゃって、
キミと猫が少し離れた場所で助けを求めたら、
ごめんねわたしは先に猫を助ける。
なのに猫しかいない生活を淋しいと思う。
猫の次に好き、と言ったわたしに、
猫はあなたにとって特別だからそれでいいよ、と笑った、
あの人のにがわらい、を
おもいだす。
いくべきところよりいきたいほうへ
2004年8月19日 おもうこと逃げてしまいたくなったのは、
正しくあるべきことに、
疲れてしまったからだ。
わたしじしんは、
正しい道など進めてはいないのに、
正しくなくてもどうってことないって思っているのに、
凛としていることを意識し過ぎて、
心がどんどんと離れて、
届かない所へ離れて行くから。
常に精神性を、
美しくあろうと、
意識して来た。
疲れてしまった。
ただ、流れて行こうと思う。
それが後に後悔を呼ぶものだったとしても、
今、わたしが、
行きたい方向へ、
行ってみようと思う。
いつだって引きかえせる。
全てがわたしの、
血肉となるのだから。
善も、悪も、愛も哀もすべてなにもかも。
正しくあるべきことに、
疲れてしまったからだ。
わたしじしんは、
正しい道など進めてはいないのに、
正しくなくてもどうってことないって思っているのに、
凛としていることを意識し過ぎて、
心がどんどんと離れて、
届かない所へ離れて行くから。
常に精神性を、
美しくあろうと、
意識して来た。
疲れてしまった。
ただ、流れて行こうと思う。
それが後に後悔を呼ぶものだったとしても、
今、わたしが、
行きたい方向へ、
行ってみようと思う。
いつだって引きかえせる。
全てがわたしの、
血肉となるのだから。
善も、悪も、愛も哀もすべてなにもかも。
あまりにすべきことが見つからなかったので、
ゆっくりと時間をかけて、
半身浴をした。
それから、
爪の甘皮のケアをして、
久しぶりに自分で、ネイルを塗った。
はみ出しこそしないけれど、
仕上がりに満足はいかない。
明日ネイルサロンに行こう、と
決心する。
指先が綺麗であれば、
少しは気が晴れるだろう。
ベビィピンクをベースにした、
フレンチネイルに仕上げられた、
小さな爪は、
不器用に、居心地が悪そうに、
わたしの指先に、
ちょこん、と鎮座している。
スキと言ってくれる人はいる。
淋しいとき、紛らわしてくれようとする人は、いる。
でも、わたしの心はゆらゆらと、
相変わらず、
心細そうに、
漂っているだけ。
どこに行きたいのか、
ただ、遠くに行きたいとしか、
カエリタイ、としか、
分らない。
どこにもわたし場所はない。
強く、強く、
抱きしめて欲しい。
潰れてしまうぐらいに。
呼吸が止まるぐらいに。
永久なんて望んでいないから。
今だけでいい。
潰して欲しい。
ゆっくりと時間をかけて、
半身浴をした。
それから、
爪の甘皮のケアをして、
久しぶりに自分で、ネイルを塗った。
はみ出しこそしないけれど、
仕上がりに満足はいかない。
明日ネイルサロンに行こう、と
決心する。
指先が綺麗であれば、
少しは気が晴れるだろう。
ベビィピンクをベースにした、
フレンチネイルに仕上げられた、
小さな爪は、
不器用に、居心地が悪そうに、
わたしの指先に、
ちょこん、と鎮座している。
スキと言ってくれる人はいる。
淋しいとき、紛らわしてくれようとする人は、いる。
でも、わたしの心はゆらゆらと、
相変わらず、
心細そうに、
漂っているだけ。
どこに行きたいのか、
ただ、遠くに行きたいとしか、
カエリタイ、としか、
分らない。
どこにもわたし場所はない。
強く、強く、
抱きしめて欲しい。
潰れてしまうぐらいに。
呼吸が止まるぐらいに。
永久なんて望んでいないから。
今だけでいい。
潰して欲しい。