あのひとのところから去るとき、

わたしは言った。

愛していると同じだけ、

憎んでいた人へ。

わたしを忘れないで。

憎んでも忘れないで。

それがわたしたちが共にいた、

軌跡だから。

小さな小さな出来事の一つ一つなんて、

どうでもいいことはもう忘れた。

ただ、あのもう戻り得ない時間の一塊全てを、

穏やかに、憎んでいる。

まるで傷つけあうためみたいに深く、深く、

愛した。

まるで壊してしまいたいように、

強く、強く、抱いた。

ただ、戻りたいとは思わないあの日々を一塊として、

わたしは今も、緩やかに、

憎んでいる。

わたしは忘れない。

殺してしまいたいほど憎み、

愛したあの人とともにいた日々を。

ちぎれるほどに傷つけあった日々を。

戦うように抱き合ったあの、日々を。

コメント

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索